が、けだものの血でもないのだよ」
 ふしぎなことを彦太がいった。人間の血でもなく、けだものの血でもない。そんなことがどうして信じられようか。
 ――だが、彦太は何か自信をもっているらしく見えた。
 その謎の正体は何?


   兄の手帳


 雪こそなけれ、一造兄さんのこもっていた穴は、ひんやりと肌さむい。
 それに彦太が、血液型についてへんな話をはじめたものだから、五助は気味がわるくなって、背中に水をあびたようにぞっとした。
「五助ちゃんの手についていた血は、人間の血でもないし、けだものの血でもないことが分ったんだ。だからあの血は、兄さんのからだから出た血ではないから安心したまえ」
「兄さんの血でないと分ったのは、とてもうれしいよ」五助はほほえんだ。「しかし、人間の血でも、けだものの血でもないとすると、いったい何者の血だろうね。ああ気持が悪い」
「謎がそこにあるんだ。その謎をこれからぼくたちの手でときたいね」
「彦ちゃんには、すこしは見当がついているのかい」
「いいや、だめなんだよ」彦太は首をふったが「しかしねえ、ひょっとすると、あれはいつだか五助ちゃんがいった青髪山《あおがみやま》
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