をつけると、赤い焔《ほのお》はぱちぱちと音をたてながら燃えさかり、雪の山中はものすごく照らし出された。掘出作業は、夜中つづけられたが、それでもまだ目的をはたすことができなくて、ついに暁をむかえたが、どこまでも不幸なことに、その頃になって、またもや猛烈な大吹雪《おおふぶき》となってしまった。それは今も気象台の記録に残っている三十年来の大吹雪の序幕だった。
そうなると、もう人間の力ではどうにもならなかった。人々は涙を流しながら、山はそのままにして、生命からがら、ふもと村へ引きあげねばならなかった。その中には五助も彦太もまじっていた。
あの変事も、記録やぶりの大吹雪も、共に青髪山の魔神のたたりだといううわさが、その後その地方にひろがったのも、ぜひないことであったろう。
それから数ヶ月の日がたった。
五月の半ばすぎのある日、五助の家へひょっくりと彦太がすがたをあらわした。休みでもないのにどうしたのかと、五助はいぶかりながら、うれしく彦太をむかえたが、彦太の話では、東京はひどい食糧不足のため、学校は当分のうち授業が休みになったということだった。五助は、へえそうかねと目を丸くしておどろいた
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