顔色をかえた。「すると一造兄さんが穴の中で……」
「さあ、それはまだほんとうかどうか分らないんだ。雪穴を掘りだした上でないと、確かにそうだといえないよ。だから気を落すのはまだ早いよ」
彦太は五助を一生けんめい、なぐさめたが、心の中では、これはたいへんなことになったぞ、と思った。
「五助ちゃん。山を下りよう。そしてこのことを皆に知らせようや」
「そうだ。村の人にそういって、雪崩の下から雪穴を早く掘りだして見なければ……」
五助と彦太とは、雪の中に幾度もころびながら、大急ぎで山を下りた。
すこし早すぎる雪崩のこと、一造の行方不明のこと、五助の手首についていた血のこと――二人が知らせた変事は、すぐ村中にひろがった。すぐさま救援隊がつくられ、一同は青髪山の現場へかけつけ、そこで雪掘りが始まった。
果して雪崩の下から、どんな怪しい事が掘りだされるだろうか。
雪とけて
変事を知ってかけつけた村人たちは、雪の中に一生けんめいに雪崩《なだれ》のあとを掘りかえした。しかし仕事は思うように進まず、やがて夜が来た。ふもと村からはこばれた薪《まき》があちこちにつみあげられ、油をかけて火
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