が高くなりました。蒸発作用の潜熱によって室内の熱量は奪われ、さてこそ室内温度の下降を導くに至ったのです。それから三分ほど経って、湿度と温度の曲線は、常識では考えられぬほどの異常な変動を生じています。すなわち、湿度は九十五パーセント近くに昇り、温度は華氏で十五度も急降しているではありませんか。これは濡れた衣服を着た人間が、この計器にふれんばかりの近くにすすみよったことを示すものなのです。恐らく湿度計は乾湿《かんしつ》ハイグロメーターの湿球のような状態におかれ、水銀は急に熱を奪われて萎縮《いしゅく》したことでしょうし、湿度計の方は、その傍に居る人の衣服がポッポッと湯気《ゆげ》を出して乾燥中であるために殆んど飽和状態に近い湿度を記録したのでありましょう。三分以後は三曲線とも元のように帰ろうとしていますが、九時五分に至って、最後の階段的変化を示しています。この変化は割合に緩慢な動きをとり、ことに気圧の如きは点線で示すような当夜中央気象台でとった気圧変化と、九時十分頃には完全に一致しているところから観察して、これは多分、実験室の扉が午後九時五分|過《すぎ》に開放された儘、放置されたため、室内の三
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