計器は屋外の気温、気圧、湿度と一致するに至ったものだろうと思います。誰か遽《あわ》てて室外に逃げ出した者のある証拠です。
[#図1、湿度・気温・気圧曲線]
 ところが只今、X線を壁に当てて見ました結果、気圧計などのすぐ近くに、異形のものを発見しました。これはまだ新しい壁の上に水分をたっぷり含んだ物体がおしつけられたため、水を吸収した部分と物質だけが極くこまかい結晶をつくり、それがためにX線を当ててみると他の部分とはまるで違った表面になっていることが判ったのです。その結果は、壁の上に鉛筆で記したとおりで、しかもそれが綾子夫人以外の誰でもないことが明白になりました」赤星探偵はこう言って、ホッと吐息《といき》を洩《もら》したのです。
「では姉が……」百合子は愕《おどろ》きのために目を大きく瞠《みは》って叫ぶように申しました。「姉が兄を殺したのでございますか」
「お嬢様、私たちの失敗は、そこにあるのです。ごらんなさい。綾子夫人の像から二寸ばかり離れた場所に、大きな手の跡がX線によって発見されています。これは丈太郎氏の右手なのです。綾子夫人を壁ぎわに押しつけたとき丈太郎氏の手は夫人の濡れた衣服を
前へ 次へ
全65ページ中52ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング