赤耀館事件の真相
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)赤耀館《せきようかん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)百人|宛《ずつ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)赤耀館事件の真相[#「赤耀館事件の真相」に丸傍点]
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「赤耀館《せきようかん》事件」と言えば、昨年起った泰山鳴動して鼠一匹といった風の、一見詰らない事件であった。赤耀館に関係ある人々の急死が何か犯罪の糸にあやつられているのではないかと言うので、其筋では二重にも三重にも事件の調査を行ったのであったが、いわゆる証拠不充分の理由をもって、事件は抛棄《ほうき》せられたのであった。東京の諸新聞は、赤耀館事件の第一報道に大きな活字を費したことを後悔しているようだったし、中でも某紙の如きは、近来警視庁が強い神経衰弱症にかかっている点を指摘し、この調子では今に警視庁は都下に起る毎日百人|宛《ずつ》の死者の枕頭《ちんとう》に立って殺人審問をしなければ居られなくなるだろうなどと毒舌《どくぜつ》を奮《ふる》い、一杯|担《かつ》がれた腹癒《はらい》せをした。
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