姉様のようにお美しい方のところへは、幾人でも忠実な男がやって参ります」
「まあ、勝見さん。お上手なのねえ――。そしてあんたは、何処がお悪いの?」
「一寸申上げ兼ねる健康状態でございます。いずれ其の内には判ってしまいましょうが、私の口から申し上げることはお許し下さい」
「百合子ちゃん。仕方がないのよ、帰しておやりなさい」嫂は沈黙を破って突然こんなことを言いました。
「そーお」百合子が不平らしく黙ってしまうと、勝見はしずかに頭を下げ、別れの挨拶をして出て行きました。
「赤耀館の悪魔は出て行った。ホホホホ」嫂がヒステリカルに高い声をあげて笑いました。
「でも魅力のある悪魔なんでしょう。姉さん、あたし、なにもかも知っててよ」
「出て行ったんだから、何も言うことはないでしょう。百合ちゃん。あの人は悪魔でも、あれからこっち外《ほか》に相談する男のひと[#「ひと」に傍点]もないんですもの」
「姉さんは、水臭《みずくさ》いひと[#「ひと」に傍点]」なにか外のことを考えているらしく、百合子が言いました。
 勝見が此の家を去ってからのち、嫂は果してすこしずつ、不健康になって行ったようです。ときには、ひどい
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