麻雀競技会は勿論中止となり、参会者はこの不吉な会場からそれぞれ引上げようとした時、ドヤドヤと一隊の警官や刑事が大広間に入って来たので、一座は俄かに緊張の空気に圧《お》されて息ぐるしくなりました。この前、笛吹川画伯のとき検屍にやって来た尾形警部の姿が、警官隊の先頭に見えましたが、警部は興奮をやっと怺《こら》えているらしく病人のような顔に見えました。
「皆さん、まことにお気の毒に存じますが、一通り本件の取調べがすみますまで、この室から一歩も外へお出にならぬように……。これは警視庁からの命令でございます」
警部が開口一番、いきなり厳然たる申渡しをいたしましたので、一座は不安とも不快ともつかぬ気分に蔽われてしまいました。中には、赤耀館にフラフラ迷い込んで来たことを一代の失敗のように愚痴《ぐち》るひともありましたし、又、医師は心臓麻痺で頓死したというからには普通の病死であるものを、なぜ犯罪事件らしい取扱いをし、我々の迷惑をも顧みず、この夜更けに留め置くのかと、不平を並べる人もありました。兄を診察した医学者たちは、警部の後に随《したが》って、大広間を出て行きました。実験室へ一行は入ってゆきま
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