の上からは、強い太陽の光線が、部屋中いっぱいにさしこんでいる。脱走しろという、夜分《やぶん》になるのは中々だ。
 そう思って、漢青年は窓によりかかったまま、硝子天井のどの辺を破ってやろうかと上を見た。
 そのときだった。
 まさにそのときだった。
 これが、天変地異《てんぺんちい》と、いうものだろうか。
 奇蹟! とは、この事であろうか。
 信ぜられない! 信ぜられない!
「呀《あ》ッ!」
 漢青年が見上げていた硝子《ガラス》天井が、突然|真暗《まっくら》になった。あの、カンカン日の当っていた硝子天井が、一瞬間に光を失ってしまったのだ!
 漢青年の毛髪は、あまりの恐ろしさのために、まるで針鼠《はりねずみ》のように逆立《さかだ》った。
「真逆《まさか》!」
 窓の外を見ようとして振返ったが、そこには同じような暗黒があるばかりで、あの絵のような美しい西湖の姿は、どこにもなかった。
 室内全体が、真暗《まっくら》だった。
 こんな馬鹿げたことはない。漢青年は、自分の視力が一瞬に亡びたのかと思った。
 それとも太陽が、突如として消滅し、世界が真暗闇に皎《かえ》ったのかとも思った。
「ドドドーン
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