西湖の屍人
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)酒場《バー》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)短刀|逆手《さかで》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]
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     1


 銀座裏の酒場《バー》、サロン船《ふね》を出たときには、二人とも、ひどく酩酊《めいてい》していた。
 私は私で、黄色い疎《まば》らな街燈に照らしだされた馴染《なじみ》の裏街が、まるで水の中に漬《つか》っているような気がしたし、帆村《ほむら》のやつは帆村のやつで、黒いソフトを名猿《めいえん》シドニーのように横ちょに被り、洋杖《ステッキ》がタンゴを踊りながら彼の長い二本の脛《すね》をひきずってゆくといった恰好《かっこう》だった。
 私はそれでも、ロマンチストだから構《かま》わないようなものの、かれ帆村なるもの[#「もの」に傍点]は、商売が私立探偵ではないか。帽子の天頂《てっぺん》から靴の裏底まで、およそリア
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