信らしいものを得たのである。
彼の実験は、ついに大成功を収めた。しかもむしろ意外といいたい簡単な勤労によって――。
思索に苦しむよりは、まず手をくだした方が勝ちであると、さる実験学者はいった。それはたしかに本当である。
でも、彼が思索の中に考えついた一見荒唐無稽の「生ける腸《はらわた》」が、こうして目の前のテーブルの上で、ぐるっ、ぐるっと生きて動いているかとおもうと、まったく夢のような気がするのであった。
しかももう一つ[#底本では「しかしもう一つ」]特筆大書しなければならないことは、こうして彼の手によって大気中に飼育せしめられつつあるところの腸《はらわた》が、これまで彼が予期したことがなかったような、いろいろ興味ある反応をみせてくれることであった。
たとえば、今も説明したとおり、この生ける腸《はらわた》が砂糖水をもっとほしがる素振りを示すなどということはまったく予期しなかったことだ。
それだけではない。腸《はらわた》と遊んでいるうちに彼はなおも続々と、この生ける腸《はらわた》がさまざまな反応を示すことを発見したのだ。
細い白金の棒の先を生ける腸《はらわた》にあて、それか
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