のだった。
(なんという高等動物だろう)
吹矢はひそかに舌をまいた。
こうして、彼が訓練した生ける腸《はらわた》を目の前にして遊んでいながらも、彼は時折それがまるで夢のような気がするのであった。
前から彼は、一つの飛躍的なセオリーをもっていた。
もしも腸《はらわた》の一片がリンゲル氏液の中において生存していられるものなら、リンゲル氏液でなくとも、また別の栄養媒体の中においても生存できるはずであると。
要は、リンゲル氏液が生きている腸《はらわた》に与えるところの生存条件と同等のものを、他の栄養媒体によって与えればいいのである。
そこへもっていって[#底本では「そこにもっていって」]彼は、人間の腸《はらわた》がもしも生きているものなら、神経もあるであろうしまた環境に適応するように体質の変化もおこり得るものと考えたので、彼は生ける腸《はらわた》に適当な栄養を与えることさえできれば、その腸《はらわた》をして大気中に生活させることも不可能ではあるまい――と、机上で推理を発展させたのである。
そういう基本観念からして、彼は詳細にわたる研究を重ねた。その結果、約一年前になってはじめて自
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