本では「常温常湿度」]の大気中で、ぐにゃりぐにゃりと活撥な蠕動をつづけていた。
医学生吹矢隆二は彼の考案した独特の訓練法により、世界中のいかなる医学者も[#底本では「いかなる医学生も」]手をつけたことのなかったところの、大気中における腸《はらわた》の生存実験についに成功した[#底本では「生存実験について成功した」]のであった。
同棲生活
医学生吹矢は、目の前のテーブルの上に寝そべる生ける腸《はらわた》と、遊ぶことを覚えた。
生ける腸《はらわた》は、実におどろいたことに、感情に似たような反応をさえ示すようになった。
彼はスポイトで[#底本では「彼がスポイトで」]もって、すこしばかりの砂糖水を、生ける腸《はらわた》の一方の口にさしいれてやると、腸《ちょう》はすぐ活撥な蠕動をはじめる。そして間もなく、腸《ちょう》の一部がテーブルの上から彼の方にのびあがって、
「もっと砂糖水をくれ」
というような素振りを示すのであった。
「あはあ、もっと砂糖水がほしいのか。あげるよ。だが、もうほんのちょっぴりだよ」
そういって吹矢は、また一滴の砂糖水を、生ける腸《はらわた》にあたえる
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