に錠がかかっていて明《あ》かないんだよ。窓にもカーテンが下りていて、中は見えないしさ、困っちまうね。それに中には旦那様がいらっしゃる筈なのが、しーんとしているんだよ。気味がわるいじゃないかねえ」
お紋はぶるぶる慄《ふる》えていた。でも、男たちが窓を外から破って、室内へはいった。
「おい、たいへんだ。旦那様が縡切《ことき》れておいでだ」扉を内側から開けて、下男たちがいった。
旦那様は、たしかに居間の絨緞《じゅうたん》のうえに大《だい》の字《じ》にのびて死んでいた。
その傍には、小|卓子《テーブル》や椅子などが倒れており、大きな桐《きり》の箱なども転がっている。
そのとき室内へ組立て梯子《はしご》を担《かつ》ぎこんできたものがあったが、それは別人ならぬ帆村だった。彼はするすると身軽にそのうえにのぼって、天井裏の網格子を外して、そこから小袋をとりだした。
「うむ、これだ」
小袋の口を明けて逆にしてみると、黄色っぽい鼠がかった鉱石が転がり出た。
「ふん、これは水鉛鉱《すいえんこう》だ。珍らしくなかなか良質のものだ。光枝さん、大手柄だぞ」
さてここに隠されていた鉱石は現れたが、その鉱
前へ
次へ
全36ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング