》くようにいった。
 そこへ責任者のお紋をはじめ、お手伝いさんの一隊がばらばらと駆けつけた。
「あらまあ、またオギンさんが壊したの。きょうはこれで七つ目よ」
 光枝は光枝で、傷口をおさえて、その場に坐りこみ、
「あいたたた」と叫ぶ。旦那様は、光枝の負傷にやっと気がついた。
「おう、えらい怪我をやったな。そりゃ早く手当をせんといかん。ほら、この莨《たばこ》をもんで傷口につけろ。このハンカチでおさえて、そして医者を呼べ」
「あらまあ、オギンさん、怪我をしたの。天罰覿面《てんばつてきめん》よ」
「こら、なにをいっとるか。早くハンカチで結《ゆわ》えてやれ、それからこの壊れ物を早く片づけて――」と、旦那様はいったが、どうしたわけか急にまた周章《あわ》てて、
「おい、皆、早く向うへいけ。片づけるのはあとでいいから、早く向うへいけ」
「はい、はい」といいながら、お紋は光枝の怪我《けが》した脚にハンカチを結きつけようとしているのを見て、旦那様はさらに大きな声で、
「こら、ここで結えなくともいい。ギンヤを早く向うへ担《かつ》いでいけ。こら、早くせんか」
 旦那様が目に入れても痛くない筈《はず》のギンヤま
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