ききよし》というのです」
「ハルキ・キヨシ。いい名前だな。ハルキ・キヨシ君に、わしは、わしの生命《いのち》の次に大切にしていたものをゆずる。キヨシ君。すまんがわしをもう一度、うつ向けにしておくれ」
春木少年は、老人のいうとおりにした。
「キヨシ君。わしがいいというまで、ちょっと横を向いていておくれ」
老人は、へんなことをいった。しかし少年は、いわれるとおりにした。
老人は、ふるえる手を、自分の目のところへ持っていった。それから彼は、指先で右の目のところをもんでいた。そのうちに、老人の指先には、白い球《たま》がつまみあげられていた。卵大《たまごだい》ではあるが、卵ではなく、一方に黒い斑点《はんてん》がついていた。
義眼《ぎがん》であった。老人の右の目にはいっていた入れ目であった。
「さ。これをキヨシ君に進呈《しんてい》する」
老人は、気味のわるい贈物を、春木少年の方へさしだした。
なんということであろう。老人は気が変になったのであろうか。
春木少年は、まさか義眼とも思わず、それを卵か石かと思って受取った。
もらった義眼《ぎがん》
「これは何ですか。これはどんな
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