るシャツと、それから手拭《てぬぐい》とを利用するほかない。春木少年は実行家《じっこうか》だったから、そう決心するとまず老人を元のようにねかし、それから急いで服をぬぎすて、縞《しま》のシャツをぬぐと、それをベリベリと破って長いきれをこしらえ、端と端とつなぎあわせた。手拭もひきさいて、それにつないだ。
「これでよし。さあ出来た。おじさん、しっかりなさい。傷口に仮《か》りの繃帯をしてあげますからね」
 そういって春木は、再び老人を抱きおこして、上向《うわむ》きにした。
 老人は口から、赤いものをはき出した。胸をやられているからなのだ。少年は、絶望の心をおさえ、老人をしきりにはげましながら、傷口をぐるぐる巻いてやった。
 その間に、老人は苦しそうにあえぎながら、目をあけたり、しめたりしていたが、少年がしてくれた傷の手当がすんで、しずかに地面にねかされたとき、
「あ、ありがとう。か、神の御子《みこ》よ……」
 と、しわがれた聞きとれないほどの声で、春木少年に感謝した。そのとき老人ののどが、ごろごろと鳴って、口から赤い泡立ったものがだらだらと流れだした。
「ものをいっては、だめです。おじさんは、胸
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