搭乗者《とうじょうしゃ》へ警戒の目を光らせる。彼らの服装は、まちまちであり、背広があったり、作業衣であったりした。
すると機胴《きどう》の扉があいて、一人の長髪の男が顔をだした。彼は手を振って、
「大丈夫だ。奴《やっこ》さんはもうあばれる力なんかないよ」
といった。この男は、生駒《いこま》の滝《たき》の前で、縄ばしご伝いにヘリコプターから下りてきて、戸倉老人を拾いあげた男だった。波立二《なみたつじ》といって、この山塞では、にらみのきく人物だった。
そのとき、奥から中年の男が駆けだしてきて、波立二に声をかけた。
「おい。戸倉はまだ生きているか。心臓の音を聴いてみてくれ」心配そうな顔だった。
「脈はよくありませんよ。でもまだ生きています」
「新しく傷を負わせたのじゃなかろうね。そうだったら、頭目《とうもく》のきげんが悪くなるぜ」
「ふん、木戸《きど》さん、心配なしだよ。おれがそんなへまをやると思いますか。射撃にかけては――」
「そんならいいんだ。担架《たんか》を持ってくるから、そのままにしておいてくれ」
木戸とよばれた中年の男は、ほっとした面持《おももち》になって、うしろを振返った
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