る。
 その昔、国内麻の葉のごとく乱《みだ》れた戦国の世に、スペインよりわたってきた、一宣教師によって建てられたという伝説以外、誰もこの、ヘクザ館の由来《ゆらい》を知っているものはない。
 爾来《じらい》、幾星霜《いくせいそう》、風雨《ふうう》にうたれたヘクザ館は、古色蒼然《こしょくそうぜん》として、荒れ果ててはいるが、幸《さいわ》いにして火にも焼かれず、水にもおかされず、いまもって淡路島の中央山岳地帯に、屹然《きつぜん》としてそびえている。
 いつのころか、ここはカトリックの修道院《しゅうどういん》になって、道徳|堅固《けんご》な外国の僧侶《そうりょ》たちが、女人|禁制《きんせい》の、清い、きびしい生活を送り、朝夕、聖母《せいぼ》マリヤに対する礼拝《れいはい》を怠らない。
 それは秋もようやくたけた十一月のおわりのこと、二人の教師に引率《いんそつ》された中学生五名が、このヘクザ館を見学にきた。
 教師のうちの年老いたほうが、院長に面会して、館内を参観させてもらえないかと申込むと、スペイン人|系《けい》の老院長はすぐ快《こころよ》く承諾して、若い修道僧を呼んでくれた。
「ロザリオ、この
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