った。しかし自分が弱音《よわね》をはいては、他の二人をがっかりさせると思い、歯をくいしばってがんばった。みんながそうしたものだから、山姫山の嶮《けん》もついに征服して、やがて地形は、わりあいにゆるやかな斜面となった。そして山姫山の頂上にある、測地用《そくちよう》の三角点のやぐらが、夕陽《ゆうひ》を背負って、にょっきりと立っているのが見えてきた。三人は、疲《つか》れを忘れて足を早めた。
山姫山の頂上に小屋があった。三角点のすぐわきのところである。これは陸地測量隊《りくちそくりょうたい》がかけていった小屋で、もちろん無人のときの方が多い。その空《あ》き小屋《ごや》に三人ははいって、その夜はここで一泊することにした。
夕食の時刻がきているが、その用意はなかった。ただ戸倉老人は、チョコレートの残りと、それから三枚のするめ[#「するめ」に傍点]を持っていた。それをかじって、飢《う》えをしのいだ。
日が暮れだした。もうでてもよかろうと、三人は小屋の外にでて、下界をながめた。はるかに芝原水源地が、ひょうたん形をして湖面《こめん》がにぶく光っている。明日の行程《こうてい》でたどりつく目的地の湖尻
前へ
次へ
全242ページ中154ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング