いじわるく、身をかくすに足る大木もない。そこで熊笹の中にうつ伏したまま、岩のように動かないことにつとめた。空から見下ろすと、背中がまる見えのはずであった。だから今にもだだだーンと、機関銃のはげしい掃射《そうしゃ》をくうことかと生きた心地もなかった。
いいあんばいに、ヘリコプターは、こっちへ飛んでくる途中で、とつぜん針路《しんろ》を北へ曲げたので助かった。よもやこんな西の方まで逃げてきているとは思わなかったのであろう。きわどいところであった。
ヘリコプターが追いかけてきたのは、その一回だけであった。タヌキ山を駆け下り、しばらく沢について歩き、それからいよいよ山姫山へのぼりだした。
こののぼりの二時間が、一番苦しかった。険《けわ》しい斜面《しゃめん》で、木の根につかまって、すこしずつのぼっていくのであった。枯れ葉に足をとられて、せっかくのぼった斜面を、ずるずるとすべり落ちて、大損《おおぞん》することもあった。またぐちゃりと気味のわるい、山びるをつかんで青くなったことはいくたびか分らない。腹は減り、のどはかわき、目は廻った。もうこのへんでへたばって声をあげようと思ったこともたびたびであ
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