た、つづいて起った銃声のすさまじさによって、はっと身の危険を感じた。
「あ、あぶない」牛丸少年は、身をひるがえすと、かたわらの大きな柿《かき》の木に、するするとのぼった。牛丸は、木登りが得意中の得意だった。だから前後の考えもなく、柿の木なんかによじ登ったのである。それは、彼のために、幸福なことではなかった。
 そのときヘリコプターは、戸倉老人のま上まできた。胴《どう》の底に穴があいて、そこから一本のロープがゆれながら、まい下ってきた。
 すると、ロープを伝わって、一人の男がするすると下りてきた。そのときロープの先は地上についていた。その男は、カーキ色の作業衣《さぎょうい》に身をかためた男だった。その男も倒れている戸倉老人も共に探照灯の光の中にあった。
 老人は、死んでしまったように、動かない。
 牛丸少年は、柿の枝につかまって、この有様をびっくりして眺めている。
 作業衣の男は、ついに地上に足をつけた。ロープを放して、戸倉老人の方へ走りよった。そして膝をついて老人の身体をしらべだした。彼のために、老人は二三度身体を上向きに又下向きにひっくりかえされた。
 しばらくすると、作業衣の男は立
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