て照らしつけたのだ。
「あッ」春木少年は、岩にしがみついた。
 ぎらぎらと、強い光が、春木少年の左の肩を照らしつけた。
 少年は、なんとはなしに危険を感じ、しずかに身体を右の方へ動かして、ヘリコプターの探照灯からのがれようとした。
 しかし探照灯は追いかけて来るようであった。
 春木は、岩にぴったりと寄りそったまま、身体を右の方へ移動していった。
 すると、彼はとつぜん身体の中心を失った。右足で踏んでいた土がくずれ、足を踏みはずしたのだった。そこには草にかくれた穴があった。身体がぐらりと右へ傾《かたむ》く。「あッ」という間もなく、彼の身体は穴の中へ落ちこんだ。両手をのばして、岩をつかもうとしたが、だめだった。
 少年の身体は、深く下に落ちていって、やがて底にたたきつけられた。それは、わりあいにやわらかい土であったが、彼はお尻《しり》をしたたかにぶっつけ、「うン」と呻《うな》り声をあげると、気を失った。
 気を失った少年のそばに、戸倉老人がゆずり渡した疑問の義眼が一つころがっていた。そして義眼の瞳《ひとみ》は、まるで視力があるかのように、上に丸く開いている空を凝視《ぎょうし》していた。

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