年を、そっとこの監房の中へすべりこませたのか。
 そのような春木少年の冒険ものがたりは、その夜くわしく、牛丸君に語られた。
 また、牛丸君の家がその後、どうなっているかということや学校の話、警察の話、チャン老人殺しの話など、春木君が牛丸君のために話してやることは多かった。
 牛丸君の方でも、この山塞に連れてこられてからこっちのことについて語ることが少くなかった。
 それらのことがらの中で、読者がまだ知らない話をここで述《の》べたいのであるが、今はそれができない。というのは、今ちょうど、机博士の身の上におそろしい危難が迫っているからである。その方を先に記《しる》さなくてはならない。

   罠《わな》くらべ

 黄金《おうごん》の糸で四|頭《とう》の竜《りゅう》のぬいとりをしたすばらしくぜいたくなカーテンが、頭目台《とうもくだい》のうしろに垂《た》れている。
 台の上には、頭目用の椅子が一つおかれているだけで、人の姿はその上にない。いやこの部屋には今誰もいない。
 垂れ幕の奥では、かすかな音が、ときどき聞える。
 頭目が、この夜更《よふ》けに、なにか仕事をしているのであろうか。もう只今《
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