とがなくなったんだか分らない。
金庫は閉っていた。この中を調べたが、これもまたはっきり分らない。金庫の中には、日本の紙幣やアメリカの紙幣などがしまってあった。これだけが有金全部《ありがねぜんぶ》であったのか、それとも犯人はその一部を盗んでから、金庫を閉めて逃げたのか、どっちとも分らなかった。
かれ秋吉警部には興味のないことであったが、読者には興味のあることがらを、ここで一つ述べておこう。それはアメリカの紙幣で千二百ドルがそっくりそこに残っていたことである。これは犯人がどういう種類の人物であるかを判断するのに、一つの参考となる。――秋吉警部は、気の毒にも、そのような資料をつかむ機会にめぐまれていないのだ。
そこで警部の注意力は、もっぱらチャン老人の致命傷《ちめいしょう》と彼の死んでいた場所とその身体の恰好《かっこう》にそそがれた。
ピストルで心臓のまん中を見事に撃ちぬかれたのが、老人の死因だった。老人は声もたてずに死んだのであろう。
ピストルは老人の胸に向けられ、その銃口は老人の服にぴったりとふれていたにちがいない。その状況で、ピストルは発射されたのだ。だから銃口のあたっていた
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