で、犯人の目星《めぼし》がさっぱりつかないので、この事件を担当している、秋吉警部《あきよしけいぶ》はいらいらしていた。
彼は、チャン老人の絶命の三十分あとへ現場へついて、さっそく捜査の指揮をとったのであるが、血の流れている店内は、事件発見者の少年のしらせで駆けつけた近所の人たちによって、すっかり踏みあらされていた。犯人をつきとめるための証拠《しょうこ》が、これではつかめない。警部は困ってしまった。
それに、チャン老人は、店内にひとり住んでいたので、当時の店内の様子を証言する者がいなかった。向う三軒両隣はあるけれど、今日はチャン老人が殺害されると分っているなら、老人の店に出入りする人物に注意を払っていたであろうが、そんなことはあらかじめ分っていなかったので、誰も正確に出入りの人物を証言する者がなかった。おそらく犯人は、そういう事情をのみこんでいて兇行《きょうこう》したのであろうと、秋吉警部は考えた。
店内をしらべて、何が盗み去られたかを調査した。
その結果が、またはっきりしないのであった。なにしろたくさんのこまごました物がある。その品物の目録《もくろく》などはなかったから、何と何
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