も引けまへんわい」
「そうかね。それじゃこれから三十万円、なんとかして集めてこよう」
 机博士はそういって、チャンの骨董店をでていった。
 その博士は、店先から五六歩離れると、肩をすくめて、ふふんと笑った。
「あの慾ばり爺《じじい》め、まさかおれが、あの黄金メダルの裏表をあの店の中で、写真にとってしまったことに気がつくまい。ふふふ」
 そういって、机博士は、オーバーの釦《ボタン》に仕掛けてある秘密撮影用の精巧な小型カメラを、服の上から軽く叩いた。博士らしい早業《はやわざ》であった。
「……だが、あの黄金メダルがあそこに売りにでていることを、頭目に知らせたものか、それとも何とかして、おれが手に入れておいたものか、さて、どっちにしたものだろうなあ」
 博士は、海岸通りの方へ、長いコンパスで歩いていった。
 第三の客がきたのは、それから三十分ばかりあとのことであった。
 その人は、外国の船員の服装をつけていた。髪も瞳も黒くて、日本人のようであったけれど、顔色の赤いことや鼻柱の高いことなどから見て、スペイン系の人のようであった。彼の顔立ちは整《ととの》っていたが、どうしたわけか、おそろしい刀傷
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