いは、そういう秘密の小屋か地下室かがあり、その中へ用事のため雪子が入ったところ、戸がしまってでてこられなくなったのではないかともいう。
しかしこの三つの説は、今のところ、どれも皆、本当のように思われなかった。
というのは、第一の、部屋の外側より部屋の内側の扉にさしこんである鍵をまわして錠を下ろすという方法は、この研究室ではできないことだった。外国で、それに成功した話はないでもないが、それは糸を使ってやる方法で、扉と床《ゆか》または鴨居《かもい》の間に、まっすぐに通した隙間《すきま》がなければできないことだった。雪子学士の研究室の場合は、その隙間がなかったのだ。すなわち扉は外側から額縁《がくぶち》みたいな壁体によってぴしゃりと壊し、扉の上下左右にはまっすぐな隙間ができないから駄目であると分った。
また相当厳重な家探《やさが》しをした結果、秘密の部屋は発見されなかった。
第二の、偶然に錠が下りたと考えるのは、あまりに実際に遠い。そんなことは千に一つも万に一つもあろうはずがない。係官が錠を調べたところ、その錠は完全なもので、決して偶然に錠が下りるような、そんながたがたのものではないと
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