ことばかりしか耳にしない。
あの日、警視庁などの人がきて、木見さんの屋敷を全部のこるくまなく調べていったそうであるが、その結果として、雪子姉さんの両親へ、係官が話していってくれたところによると、この事件は、よほどの難事件であるということである。もちろん今のところ、この事件の解決について何の手がかりも見つからないのだそうである。
係官の説に三つあった。
一つは、雪子学士が非常にたくみな方法によって、この家からでていったとするものである。たとえば、何かのからくりを使って、部屋の外側より、部屋の内側の扉にさしこんである鍵をまわして扉に錠を下ろし、それからそのからくりを手もとへ取りもどして、家出をしたというようなやり方である。或いは、窓に工夫があるのかも知れない。または本棚のうしろや、機械台の下に、ぽっかりあく秘密の出入口があるのかもしれないともいわれた。
第二は、偶然、その扉の錠が下りたのだという説である。
第三は、雪子学士は家出をしたのではなく、その研究室又は邸内のどこかにいるのではないかというのである。それは、雪子学士が自分の考えによって、わざとかくれているのかもしれないし、或
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