て煙突からでていったとしか思われませんね」
道夫は、ついにわけがわからなくなって、そんな無茶なことをいってみるしかなかった。
「さあ、煙突のことは、まだ聞かなかったけれどね、まさかあの煙突からはね……」
茶の間から植込と塀越しに、お隣の古風な煉瓦《れんが》造りの赤いがっちりした煙突が見える。しかしあの煙突から雪子姉さんがでられるとは思われなかった。冬、石炭をもやすと煙が二条になってでてくるところから考えて、あの煙突の上は、あまり太くない土管が二つ平行に煙の道をあけているのに違いない。そうだとすれば、その土管は鼠《ねずみ》か猫ならばともかく、人間が通り抜けることはできないであろうに。考えれば考えるほど、ふしぎな雪子学士の行方不明だった。
事件は迷宮入《めいきゅうい》り
道夫にとっては、雪子学士が行方不明になったことは、この上もなく悲しく心配であった。
どうかして雪子姉さんが早く帰ってきてくれればいい。もしすぐ帰れないのだとしても、どうか生命《いのち》は無事で生きていてくれるといいといのらずにはいられなかった。
だがよく考えてみると、雪子姉さんの運命については、よくない
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