だった。
「先生、……雪子姉さん……」
 道夫は芝生の上をはいながら、二人の方へ一|糎《センチ》でも近づこうと努力しながら雪子と川北先生のようすを凝視《ぎょうし》した。
 そのとき彼は、雪子がもがきながら、後へ上半身をねじって、川北先生を突きはなそうと懸命に力をだしているのを見てとった。雪子姉さんは何かを誤解しているのであろう。そんなことをしないで、おとなしく川北先生の腕の中に引き留められていればいいのにと道夫は思った。
 川北先生は、雪子の懸命の反抗にも、忍耐づよくこらいえている様子だった。彼は雪子を後から抱きすくめたまま、金輪際《こんりんざい》はなそうとはしなかった。
 が、そのときである。道夫はにわかに、予期しなかった不安に襲われた。というのは、互いに搦《から》みついている二人の姿が急にぼんやりしてきたからである。
「先生、どうしたんです……」
 そういう間にも、揉《も》み合った先生と雪子の姿は、ますますぼんやりしてきて、やがて道夫の眼には見えなくなった。彼は息のとまるほどおどろいた。
 彼は、それでもまだその異変がそれほどおそるべきこととは気がつかず、或《ある》いは眼の見まちが
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