、お嬢さん」
 川北先生は、勇気をふるいおこして、怪しい影の後から図書室へ飛びこんだ。道夫もそれに続いた。あれが雪子の幽霊か幽霊でないか、たしかめるには絶好の機会だ。そう思うと、さきほどの恐怖と戦慄《せんりつ》が、幾分へった。
 と、雪子の怪影は、図書室の真中にたたずんでいた。川北先生は腕をのばして、怪影の腕をつかもうとした。
 すると怪影は、風のようにすうっと前へ移動し、先生の手は空《むな》しく空気をつかんだ。
「しばらく、しばらく、お母さまが心配していられるのです。しばらく待って下さい」
 川北先生は哀願するように、怪影の後から呼びかけた。だが怪影の耳には、その言葉が入らないのか、そのままつつうと前に進んだ。
「あ、外へでる。壁を通りぬけて……」
 と叫んで、道夫はわれとわが眼を疑った。が、それは事実だった。怪影は、図書室の奥の壁につきあたると、そのまま壁の中に姿を消していったのである。
「ああ!」
 川北先生もそれを見て取って、今や壁の中に消えんとする怪影を引きとめようと突進したのであるが、それは僅《わず》かに時おそく、先生は壁にいやというほどぶつかったばかりだった。
「失敗《し
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