い早口で話しかけた。
「道夫君、君はこの部屋で女の首を見たといったね。その女の首は、どのへんに浮んでいたと思うのかね」
道夫は、ぞっとして首をちぢめたが、
「そのへんです」
といって実験台と丸卓子との中間を指さした。
「ここかね」
川北先生は、そこまでいってみた。
「いえ、もっと丸卓子の方へよっているように思いました」
「するとここらだね」
川北先生は、手を伸ばして丸卓子の上に大きな獅子のブックエンドにはさんである大きな帳簿をなでた。その帳簿は皮革の背表紙で「研究ノート」とあり第一冊から始まって第九冊まであった。
「どうぞこちらへ」
図書室から武平が顔をだしたので、川北先生と道夫とは、そっちへいった。図書室には学術雑誌や洋書が棚にぎっちり並び、その外に器械もほうりこんであった。
「もう一つあちらに寝室がついています。それも見て頂きましょう」
武平は図書室をでて再び広間に出、南側の壁にはめこんである扉の前に立った。扉には錠が下りていたので、武平は鍵をだして腰をかがめて、あけに懸《かか》った。が、鍵が違ったらしく、すぐにはあかなかった。道夫は武平の傍《そば》へいって手助けをしよ
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