室の豪華さにおどろいたのであった。部屋の広さは十坪以上もあろうか、天井も壁も良質の白亜《はくあ》で塗装せられ、天井には大きなグローブが三つもついていて、部屋に蔭を生じないようになっていた。大きな実験台が、入口と対頂角をなしたところにすえてあり、電気の器具がならび、その向う側には薬品の小戸棚を越えてレトルトや試験管台や硝子《ガラス》製の蛇管《じゃかん》などが頭をだしていた。その左側には工作台があり、工作道具や計器の入った大きな戸棚に対していた。壁という壁は、戸棚をひかえていたが、大きな事務机が、部屋の右手の窓に向っておかれてあり、その右には書類戸棚が、左側には長椅子《ながいす》があった。また部屋の中央には、丸卓子《まるテーブル》があってその上には本や書類や小器具などが雑然と置いてあった。大理石の手洗器が、実験台の向うの隅《すみ》にあり、壁には電線の入った鉛管が並んで走っていた。個人の研究室としては実に豪華なものであった。
「こっちに図書室があります」
武平は、部屋の東側の壁にかかっている藤色のカーテンをかかげて、その中へ入っていった。そのときであった。川北先生が道夫の身体をついて、ひく
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