いくたびか変り、最後には薬がかかった色の液が白い泡をたてて沸騰《ふっとう》し、もうもうと白煙が天井の方まで立昇った。雪子はそれを見ると狂喜してコップを眼よりも上に高くさしあげ、
「ああ、ついにあたしは、元の世界へかえれるんだわ。そしてあたしの研究の勝利が確認されるんだわ。ああ、なんというすばらしい喜び、すばらしい感激でしょう」
 といってから、貴重な薬液の入った泡立つコップをもう一度高くさし上げ、それからコップを自分の唇のところへ持っていって、一気にそれを呑みほしたのだった。
 からとなったコップが、雪子の唇をはなれ、しずかに台の上におかれた。が、次の瞬間、コップは横にとんではっしと壁にあたり、粉々に砕《くだ》けた。雪子が腕を大きく振ったからであった。腕だけではない。雪子は腰から上の上半身をゼンマイ仕掛けの乗馬人形のように踊らせて振りまわした。髪がくずれて焔《ほのお》のように逆だち、両眼は皿のようにかっと見開き、口は今にも裂けそうになったが、とたんにはげしい痙攣《けいれん》と共に口から真黒い汁《しる》をだらだらと吐《は》きはじめた。と、雪子の容貌はたちまち一変して、目の前に黒い隈《くま
前へ 次へ
全134ページ中131ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング