》ができ頬はこけ、顔面にはおびただしい皺《しわ》があらわれたと思ったら、彼女はばったり実験台の上に倒れてしまった。そして全く動かなくなってしまったのである。
あまりのことに、道夫もまたその場に気を失って倒れてしまった。
道夫が気がついてみると、彼は同じ部屋で、浮浪者姿の老人に抱かれていた。あの怪しい老人がいつこんなところへ入りこんだものか、ふしぎであった。その外に、雪子の両親がいた。
「道夫君、しっかりしたまえ」
老いたる浮浪者の声は、意外にも若々しい響《ひびき》を持っていた。そして道夫は、それをどこかで聞いたことのある声に思った。
それも道理、道夫がもう大丈夫ですと答えると、その老人は帽子を脱ぎ、それから白髪頭《しらがあたま》を脱いで机上に置き、頬につけていた髯《ひげ》をむしりとった。すると老人の顔はなくなって、なんと名探偵蜂矢十六の若々しい顔がでて来たではないか。
「雪子姉さんは?」
道夫が、おどろきの中に叫んだ。
「あっちの部屋へ遺骸《いがい》をうつしてある。やっぱりだめだったよ。雪子さんにはあの薬が強すぎたと見える。あの薬を呑むことが最後の機会だったんだがねえ。惜しい
前へ
次へ
全134ページ中132ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング