、よかった。四次元世界に漂《ただよ》う者にとっては、どうしてみても三次元世界に火をつけることができなかったのよ。道夫さんあなたはその大困難を解決して下さった。あたしの生命の恩人だわ。ああブンゼン灯に火がついた。こっちのブンゼン灯にも火をつけてよ。ああ、救われる。貴重な薬が今こそ作られるのだ」
雪子学士の幽霊は、まるで火取虫のようにブンゼン灯のまわりをぐるぐると踊りまわって喜ぶのであった。
最後の機会
道夫はそれからも雪子のさしずによって、いろいろな仕事を手伝ってやった。棚からレトルトをおろして金網をおいた架台の上にのせたり、でてくるガスから湿気を取るために硫酸乾燥器のトラップをこしらえたり、沈殿《ちんでん》した薬物を濾紙《ろし》でこしたりした。そういう操作はほとんど全部道夫がした。雪子は命令したり、測定したり、判定したりするばかりだった。
深夜のこの作業は、誰にも邪魔をされないで進んでいった。
雪子はだんだんと昂奮の色を示し、じっとしていることができなくて部屋の中を歩きまわる。
「ああ、もうすこしだ、もうすこしだ」といって蛇管《じゃかん》の中をのぞいてみたり、「これな
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