いちいちそんなことおぼえていられないや」
道夫はそういった。雪子には大切な注意事項なんだろうが、道夫にはただうるさいばかりである。
「そうよ。ですから、道夫さんは、ただあたしの命令にしたがってさえいればいいの、分るでしょう」
「はあん」
「じゃあ、眼をとじていますね。これからでかけるのよ。ちょっとの間、苦しいでしょうが、がまんしてね」
道夫は、もう覚悟をして、おとなしくしていた。そのときふと気がついたのは、自分は今、川北先生のそばについているんだが、先生をほっておいて、また看護婦さんにもだれにもいいのこさないで、でかけてもいいのかどうかと反省した。
だが、そのときはもうおそかった。道夫の身体は後から抱きすくめられた。異様な気持になった。
怪しき気分
そのときの身体の痛みも、ずいぶんたえ切れないものであったけれど、それよりも道夫を苦しめたものは、全身の骨に受けたなんともたとえようのない気持のわるい振動であった。
ふだんは、自分の身体の中に骨があることは殆《ほと》んど感じないのであるが、そのとき道夫は全身をつらぬく、自分の骨が一せいにおどりだすように感じた。その骨は、一
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