う評判であったから、係官の方でもやっぱりこれは思いちがいかなと考える方が有力となった。
 こんなわけで、木見雪子学士の行方不明の謎はとけず、事件はついに迷宮入りの形となった。
 係官は、あれほど毎日つづけていた雪子の研究室の捜査をやめてしまった。
 そのかわり、雪子の友達や知合いなどの調べを始めるほか、この附近一帯に、何か怪しい出来事があったとか、或いは怪しい人物がうろついていなかったか、というような外部の探偵に移ったのであった。

   怪しい影

 道夫は、あれ以来、くやしさに煮えかえるような胸をいだいていた。
 本当の姉のように思うあの雪子姉さんが、もう一週間も姿を消してしまい、たしかに大事件であるにもかかわらず、係官の捜査が少しも成績をあげず、そればかりかこの頃では、係官たちは雪子姉さんの失踪《しっそう》事件にすっかり熱を失ってしまったように見える。まことにくやしいことだ。
(何とかして、この事件の真相を探しあてたいものだ。そして雪子姉さんを無事にとりかえしたいものだ)
 道夫は、いつもそう思っていた。それには一体どうしたらいいのであろう。中学の二年生にできることといったら、大
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