っていた「三人の双生児」の謎も、解けない儘《まま》に、そう気にならなかった。それよりも突然に死んだ真一の死因を早く知りたかった。
真一は病気のために頓死したのであろうか。いやいやあのように元気だった彼が頓死するようなことはない。それよりも問題は彼の枕頭に転がっていた空《から》のコップのことだ。コップで当り前に嚥《の》んだものなら、盆の上に戻されていなければならないと思うのに、コップが空になって畳の上に転がっていたのは可怪しい。コップから水を嚥んで、下に置こうというときに異変が起ってコップを手から墜《お》としたら、ああもなるのではないかと想像される。ではその異変というのは何であろう? それは嚥み下した水の中に、なにか毒物が入っていたというような訳なのではあるまいか。
仮りにそれが本当であったとしたらば、その水瓶の中の毒物は一体誰が投げこんだものであろうか。その恐ろしい犯人は誰なのであろうか。誰が真一を殺さねばならない特殊の事情を持っていたのだろうか。
まさか妾の全然知らない人物が入りこんで殺していったとは考えられない。どうしても犯人はわが家に出入する人物の中にあるのだと思う。その点
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