「でもあの安宅さんとやらはどうも人相がよくございませんわ。お気をおつけ遊ばせ。これはあたくしの経験から申すことでございますよ」
女史はそういい置いて、なお心配そうに妾の顔をふりかえりながら帰っていった。
それから三日間というものは、妾の邸のなかは主賓《しゅひん》の静枝と、飛び入りの安宅真一とを加えてたいへん朗かな生活を送った。真一は別人のように元気に見えた。しかし彼の青白いねっとりした皮膚や、怪しい光のある眼つきなどは別に消散する様子もなく、どっちかといえば更に一層ピチピチした爬虫類《はちゅうるい》になったような気がするほどであった。
それに引きかえ、実に妾はこの四五日なんとなく肩の凝《こ》りが鬱積《うっせき》したようで、唯に気持がわるくて仕方がなかった。考えてみるのに、それは静枝が来てからこっちの緩めようのない緊張のせいであろう。それから妾は静枝の対等の地位や静枝を帰すときに頒《わ》け与えたいと思う金のことでも気を使いすぎた。
妾はこの肩の凝りをどうにかして早く取りのぞきたいと思った。どうすればそれは簡単にとることが出来るだろうか
そうだ、いいことがある。
妾はとても素
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