晴らしい遊戯を思いついた。それはなによりも、妾の居間に真一を呼ぶことであった。
「なんか御用ですか」
彼はイソイソと室に入ってきた。
「真ちゃん。貴方に少し命令したいことがあるのよ。きっと従うでしょう」
「命令ですって。……ええようござんすよ」
「いいのネ、きっとよ。――」
と駄目を押して置いて、妾は秘めて置いた思惑をうちあけた。それはこの肩の凝りを癒すために今夜妾の室にきて妾だけにあの「海盤車娘」の舞踊を見せて貰いたいということだった。それを聞いた真一は、ちょっと愕きの色を見せたが、やがて、ニッコリ笑って肯《うなず》いた。どうやら彼は妾の胸の中にある全てのプログラムを知らぬ様だった。妾の全身は、急に滾々《こんこん》と精力の泉が湧きだしてきたように思えて肩の凝りも半分ぐらいははやどこかへ吹き飛んでしまった。
「ねえ奥さん」
と真一はすこし改まった調子で妾に呼びかけた。
「あの静枝さんという女は、ありゃ本当は何なんです」
「オヤ早もう目をつけているの、ホホホホ」
妾はそこで彼女が妾の探していた双生児の一人らしいこと、又速水女史の手で探しだされたことなどを詳しく話した。
「へえそう
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