れはもっともっと別の種類のことなのではなかろうか。「三人の双生児」のなかの一人は、どうしても妾の身上のことなんだからして、残る二人の人間という不合理に見える合理を解きあげて妾の重い負担を下ろすことにしたいものである。
4
四国の徳島へ出発した女流探偵速水春子女史は、越えて十日目に、たいへん緊張した顔付で妾の邸を訪れた。
「まあ、奥さま。どうか吃驚《びっくり》なさいますな。あたくしはとうとう、貴女さまのほんとのおはらから[#「おはらから」に傍点]を探しあてて参りましたのでございますよ」
妾は女史の言葉を、俄かに信ずる気持にはなれなかった。この六《むつ》ヶ敷《し》い同胞《はらから》さがしがそんなに簡単に解けようとは考えてはいなかったからである。
「ねえ、奥さま。お驚き遊ばしてはいけませんよ。詳しいことを申し上げるより前に、まずあたくしのお連れ申して来たお妹さま……とでも申しましょうか、それともお姉さまと申上げた方がよろしゅうございましょうか。とにかく同じ年の二月十九日に、御母堂に当ります西村勝子様がお産み遊ばしたお二方のうち、珠枝さま――つまり奥さま――ではない方のも
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