もっとハッキリした否定証明がある!」
妾はもう一つ否定証明を考えついた。それは六《むつ》ヶ敷《し》い医学的な証明でない。つまり仮りに真一にシャム兄弟的なもう一人の人間があって、それと妾とが同じ日に同じ母から分娩されたとしたら、これは常識からいっても所謂《いわゆる》三つ子である。つまり丁寧にいえば三人の三生児と呼ぶことが出来てもこれを三人の双生児とは呼ぶことはできないであろう。
結局妾は疑心暗鬼から、たいへん入り組んだことまで考えたが、これは考えすぎてたいへん莫迦をみたようなものであった。まるで抜け裏のない露地を、ご丁寧に抜け路があるかしらと探しまわって草臥《くたびれ》もうけをしたようなものであった。ともかくこれで真一の場合は、妾に関係のないことがハッキリ証明できたように思うのであるけれど、それでいてなお、なんとなく気がかりなのはどうしたことであろうか。それは妾の身の上を離れて、真一が背中にもつあの瘢痕の怪奇性が妾を脅かすのであろうか?
とにかくそんなことは忘れてしまって、妾は父が手帳の中に書きのこした「三人の双生児」という字句が持つ秘密を、別な方面から調べてみなければならない。そ
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