大きい彗星《すいせい》がすれちがった。そのとき月の表面へ、はげしく彗星の一部分が衝突した。そのとき、たくさんの月人が死んだ。彗星が去った。そのときに、月世界の表面から空気がなくなったという話だ。これは月人が子孫にいいつたえている、いわゆる伝説なんだ。だが、これはたしかにほんとうのことらしく思われる」
モウリ博士の話は、いよいよ奇怪味を増してくる。
「月人は、今いろいろな方法でもって、地中で空気を製造している。われわれ地球人が、水道の栓《せん》をひねって、水を出してのむように、月人たちは、自分の家――それはもちろん地下の穴倉式《あなぐらしき》のものなんだが、そこに住んでいて、部屋にひいてある管から、必要のときに空気を出して吸って生きている。そしてさっき話したように、空気が割れ目などを通って地面の外へにげることをおそれ、地表と地中との交通路は、空気をなるべく洩《も》らさないように、厳重な仕掛かりでふせいである」
「なるほど。それでさっきのトンネルや回転扉の話とつづくんですね」
一座は感動して、みんな溜息《ためいき》をついた。有名な探検隊長として知られているマルモ・ケンさえ、モウリ老博士
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