三十年後の世界
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)万年雪《まんねんゆき》とける

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一台|至急《しきゅう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うばガ[#「うばガ」に傍点]谷の万年雪
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   万年雪《まんねんゆき》とける


 昭和五十二年の夏は、たいへん暑かった。
 ことに七月二十四日から一週間の暑さときたら、まったく話にならないほどの暑さだった。
 涼《すず》しいはずの信州や上越の山国地方においてさえ、夜は雨戸をあけていないと、ねむられないほどの暑くるしさだった。東京なんかでは、とても暑くて地上に出ていられなくて、都民はほとんどみな地下街《ちかがい》に下りて、その一週間をくらしたほどだった。
 ものすごい暑さは日本アルプスの深い山の中も別あつかいにはしなかった。アルプス山中の万年雪までがどんどんとけ出した。雪渓《せっけい》の上を、しぶきをあげて流れ下る滝とも川ともつかないものが出来、積雪はどんどんやせていった。
 うばガ[#「うばガ」に傍点]谷の万年雪のことは、む
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