がった。日の光を見、いい空気をすいたい。それから、うまい水ものみたい、と少年たちに訴えた。
 そこで少年たちは、北岸たちを両わきから抱《かか》えて、時計屋敷の外へつれだした。それがために、少年たちはいくども往復しなくてはならなかった。
 その仕事の最後は、北岸を、八木君と四本君が抱きかかえて出ることだった。その三人が、屋敷の窓から外へ出たとき、とつぜん地震が襲来《しゅうらい》した。
 かなり強い地震であったが、前に起った地震の余震《よしん》であるにちがいなかった。
 その話をしながら、三人が庭の方へすこし歩いたとき、八木君が、
「ちょっと、しずかに」
 と、おどろいたような声を出し、それから、北岸さんの身体から手を放すと、その両手を耳のうしろへひろげ、くるっと頭をあげて大時計を見上げた。
 かち、かち、かち、かち……。
 かすかながら、聞えてくる音があった。
「たいへんだ。大時計が動いている。早くにげなくては……」
 大時計が動き出したのは、今の余震《よしん》で、振子をしばっていた古い紐《ひも》がぶっつりと切れ、それで振子は大きくゆれだしたのだ。
「たいへんだ。時計屋敷が爆発するぞ、溝
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