して拾ってみると、この時計屋敷には、まだまだ大きな秘密が残っている。それが全部とける日は、いつのことであろうか。
 その一つは、間もなくとけた。
 というのは、少年の中で耳のはやい二宮君が、この部屋のどこかで、とんとんとんという音が、かすかではあるがするのを聞きつけたのがはじまりだった。
 それと知って五少年は、部屋中を探しまわったあげく、天井の隅のところが震動《しんどう》して、かすかに壁土が落ちてくるのを発見した。
「あッ、天井の上に、誰かいるんだ」
 方々探しまわった末、天井の上にあたる部屋から救いだされたのは、永らく行方をたずねられていた北岸をはじめ七人の村人だった。その人たちは、あやうく餓死《がし》の一歩手前で救われたのだった。
 腹ぺこのかすれ切った声で、彼らが語ったところによると、七人の村人はこの屋敷の中へはりいこんで、その奇々怪々《ききかいかい》なる部屋部屋を見て歩いているうちに、とつぜん床《ゆか》が落ち、あッという間に一同はこの部屋へ落ちこんだのだ。出るには壁が高くて出られず、そこで一同は今までそこに閉じこめられていたのだという。
 北岸たちは、この屋敷を一刻も早く出た
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