ヤリウスではないよ」
五井君の推理だ。
「しかし、この屋敷から出ていったヤリウスから、その後たよりが来たという話もないじゃないか。だからヤリウスがここで白骨になっていても、つじつまはあうわけだ」
四本君は、とっぴな説をたてる。
そのとき八木君が檻の中を指した。
「見てごらん、白骨の右手のそばに、手帳みたいなものが落ちているじゃないか。あれをこっちへひっぱり出して、中を読んでみたら、なにか秘密が分るかもしれないよ」
八木君の発見はすばらしかった。棒を檻の中へさしこんで、その手帳をかきよせた。そしてその中を開いてみると、えらいことが書いてあった。それは今日まで外部には全く知られていない、この時計屋敷の秘密であった。
要点だけを書きぬいてみると、次のようになるのであった。
「わが犯《おか》せる罪のため、ついに私の上に天罰《てんばつ》が下った。今や私はこの檻の中で餓死《がし》するばかりだ。
ざんげのために、わがおそろしき罪を記しておく。私は主人ヤリウス様がどこからか持ち出してくる貴重な水鉛の鉱石に目がくれたのだ、私はそれを横領《おうりょう》しようとした。その水鉛のありかも分ったよう
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