気がつくが早いか、さっと頭をかすめたことは、怪囚人から教えられたことだ。ことに、この屋敷が、もう一時間とたたないうちに大爆発をするというおそろしい危険のことであった。
 大時計を、すぐにとめなくてはならない。
 そのために、自分は怪囚人に別れて、急いでガラス張りの道路[#「道路」はママ]を、怪囚人に教えられたとおり、走りだしたはずだった。それにもかかわらず、なぜ自分はこんなところに倒れているのであるか、訳が分らなかった。
 足もとを見ると、そこにはやはり厚いガラスがはってあった。すると怪囚人のいたところから、ここまでずっと同じガラス張りの通路がつづいているのにちがいない。
 彼はうしろをふりかえった。怪囚人の姿が見えるかもしれないと思ったからである。怪囚人は自分がこんなところで滑るかなんかして倒れたままでいるのを、遠くから見ながら、やきもきしているのではなかろうか。
 そう思って、奥をすかして見たのであるが、奥はいよいよ暗く、それに通路が曲っているので、怪囚人の姿を見ることができなかった。
 そこで八木少年は、前進することにきめ、階段をかけあがった。
 階段をのぼり切ったところに、
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